◆会報第43号より-04 重文民家

重文民家マネジメント研究会・八幡の歴史を探求する会 ジョイント研究会(9月15日)

個人所有重要文化財の課題について

重文民家マネジメント研究会・代表:碓田智子(大阪教育大学)

 このたびは、「八幡の歴史を探究する会」の皆さんにご協力をいただき、伊佐家住宅の見学会と講演会(谷直樹氏「いきている民家―くらしの知恵」)を開催することができました。また、台風が近づいていました天候にも関わらず、予想をはるかに超える多数の皆さまがご参加くださいました。この場をお借りしして、厚くお礼申し上げます。

 f0300125_9305385.jpg 重要伝統的建造物群保存地区や登録有形文化財の指定が増えることで、文化財の建造物に一般の人々の関心が向けられるようになってきました。しかし、個人所有の重文民家については、維持管理の問題とともに、住まいである重文民家をどう公開・活用していくのかという難しい課題があります。そこで、私たちは、「重文民家マネジメント会」として、NPO法人「全国重文民家の集い」の有志の方々と一緒に、個人所有重文民家の維持管理や活用についての研究を進めてきました。

 平成24年時点で、重要文化財の指定を受けている建造物のうち、近世以前の民家は347件にのぼります。重文民家のうち、およそ60%が個人所有です。個人所有の重文民家の場合は、日常の維持管理等の負担が重い上に、所有者の高齢化や継承の課題も大きいです。そのため、市町村や都道府県に移管された重文民家も多いですが、その場合は民家が従来の場所から移築され、資料館として活用されたりや民家園での展示保存となることも少なくありません。しかし、民家は人の暮らしがあってこそ、先人の住生活の知恵や暮らしを伝える歴史の生き証人としての役割を果たせると考えています。

 重要文化財建造物は、国の貴重な文化財として保護される一方で、公開や活用が求められます。しかし、個人所有の重文民家は、家の代々の資産であり、家族の日常の住まいであるという複雑な側面を持つために、寺社などの建造物とは異なる課題を抱えています。 私たちが平成24年に全国の個人所有重文民家の当主を対象に行ったアンケ-ト調査の結果(回答者数1 5 9 名)では、当主の年齢は7 0歳代以上が全体の約50%を占め、60歳代も含めると全体の80%近くにのぼりました。屋敷地や建物の掃除や小修理など、日常の維持管理は、全体の約70%が殆どを家族の手で行っていますが、当主の年齢が高いほど体力的な負担感が大きい傾向が見られました。そうした維持管理の費用について、市町村や都道府県の補助がまったくない重文民家も全体の1/4程度ありました。約60%の当主が「このまま重文民家の自己所有と管理を続けたい」と回答しましたが、その一方で全体の80%の当主が「個人所有は限界に近い」と答えています。このように、個人所有重文民家の困難な実態がアンケ-ト調査から明らかになりました。

 重文民家は地域の貴重な文化資産ですが、それを将来に渡って守っていくことは、ご当主の努力だけでは難しい時代になっています。今回の重文民家「伊佐家住宅」の見学会と講演によって、皆さまに重文民家の文化的魅力の一方に存在する問題をご理解いただくとともに、今後、地域の貴重な文化資産である「伊佐家住宅」を地域で支えていくことを考えていただくきっかけになることを願っています。
by y-rekitan | 2013-10-28 09:00 | Comments(0)
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