◆会報第37号より-05 ヌートリア考

ヌートリア考、そして「郷土口史物語」

土井 三郎 (会員)


 「会報」36号で、枚方の若松さんは、大谷川と防賀川が交わる所でカワウソに似た小動物が泳ぐ姿を見たと書いています。私も、大谷川でこの小動物を見たことがあり気になっていたのです。そこで、みなさんに情報をお寄せ下さるよう依頼しましたところ、多くの方から情報が寄せられました。以下の文章は、橋本在住の野間口秀國さんからのものです。
 「若松さんが書かれているように、カワウソは2012年8月、環境省のレッドリスト改訂で正式に絶滅が宣言された種ですので、カワウソではないと思われます。同じく、若松さんが書かれているように『大きなネズミ…』とありますように、見られた動物はネズミの仲間の「ヌートリア(Nutria)」ではないでしょうか。
 f0300125_1685771.jpgヌートリアはネズミの仲間で、日本には本来分布していない外来種であり、環境省指定特定外来生物の1種です。第二次世界大戦頃に軍隊の防寒服用(柔らかい上質な毛皮が安価に入手できるため)として飼育されたが、終戦後に毛皮の需要が激減したことに伴い、その多くが野外に放逐され野生化している様子です。
 東海より西の西日本各地に分布が拡大しており、たんぼの作物、葉野菜などに対する食害、在来種の生態系への影響、水田の畦や堤防の破壊、住宅の庭先への侵入、漁網を食い破る被害など、多くの悪影響を生じさせている動物です。
 主食は水生植物の葉や地下茎であり(一方、かわうそは肉食性)、明け方と夕方に活発な採餌のための徘徊行動が見られ、日中は巣穴で休息していることが多いです。私自身、太陽が傾くころに市内の大谷川で複数回確認しております。大谷川が流れる橋本の尻江・東山本あたりにつがいが生息、そして八幡の平谷あたりでも確認しています。
 昨年の夏に、尻江で畑仕事をしておられた地元のご婦人に被害の有無をお聞きしたことがありますが、その際には『今のところないけど…』とのお答でした」
 川口在住の高田昌史さんが、ご自身撮影されたヌートリアを送って下さいました。まさしくネズミそっくりです。これが、野間口さんも述べるように、本来、日本には生息しない外来種で、第二次世界大戦の頃に、軍部が防寒服用に輸入し飼育し始め、戦後、野外に放逐され野生化したというのは驚きです。
 害獣として嫌われているようですが、八幡土井在住の吉岡久江さんから、小冊子を同封した、心温まる次のようなお便りが届きました。ご本人の了解を得て、以下に全文紹介します。

 『桜が咲きはじめすっかり春になりました。八幡の歴史のお話楽しく読ませて戴いています。大変古い本、昭和三年、私の生れた年に発行されたものですが、参考になればと思い送らせてもらいます。
 私も八十五才、何時どうなるか解らぬ年になりました。残った人達にゴミとして処分されるかも知れませんので、少しでもお役に立つ事があれば幸甚に存じます。
 放生川にいる鼠の大型のような動物はヌートリアでした。北へ帰らぬ鴨も五、六羽遊んでおります。
 益々のご発展を祈っております かしこ
           襟あしに風やわらかし芹を摘む  久江
           桃の花村を貫く高野道        〃
           水ぬるむ泳ぎ上手なヌートリア   〃 』

f0300125_16122748.jpg 同封されていた本は、『郷土口史物語上巻』(写真右)という小冊子で、発行は八幡尋常高等小学校。吉岡さんのお手紙にありますように昭和3年12月に発行されています。著者は、同小学校の山下薫氏と岡田立捷氏ですが、「序」に同校校長が両氏のことを「本校訓導」と紹介しているように、同校の教師であったようです。序にある文章を引用します。「両先生は(中略)児童読物としての郷土誌編纂を企て、実地の踏査古老の談話其他文献の参考等種々苦心研究を重ねて愈々印刷せらるることとなつた。当地方此種の読物としては最初のものであり且つ郷土を知るには極めて恰適なる読物であることを推奨する」
 表紙に「御大典記念」とあり昭和天皇の即位を祝う趣旨があるものと思われます。そのような時代認識に影響されたものではありますが、昭和初期の八幡の様子や当時の人々の歴史認識を知る上でも貴重な文献と思われます。目次を紹介します。

 石清水八幡宮/源氏と八幡宮(一)/同(二)/西車塚(八角院)/神應寺と豊臣秀吉/男山(鳩が峰)/男山延元正平の戦/川口天満宮/西遊寺と僧行基/西遊寺の沿革/松花堂昭乗/宇智の皇子/正法寺/洞ヶ峠/金剛寺址/戊辰八幡の役
by y-rekitan | 2013-04-28 08:00 | Comments(0)
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