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◆会報第53号より-06 地誌

地誌には、どんなものがあるか?

奥山 邦彦 (会員)


 9月例会は京都市歴史資料館の伊藤宗裕先生をお招きして「地誌に見る八幡」と題してご講演いただきます。京都の古地図、地誌に精通されている先生のお話を今から楽しみにしています。
 そこで、京都の地誌について少し調べてみました。

〈史料紹介〉 地誌、京都と八幡

 八幡の地誌としては『男山考古録』(石清水八幡宮史料叢書第1巻、長濱尚次著、1848年)があります。男山を中心とするあらゆる古跡、事物、行事について、その由来変遷の迹を詳記したもので、地理的に歴史的に往時の山上山下の事柄を詳しく伝えてくれます。 江戸時代も17世紀後半になると、当時から観光都市であった京都を中心とした名所、史跡の案内など、数多くの地誌が出版されるようになってきます。天下泰平の世がつづき、人々の生活も豊かになり、寺子屋の発達により読み書きができる人が増え、地域に対する関心も高まって地誌に対する需要が増してきたのでしょう。
 その中で八幡周辺はどの様に描かれていたのでしょうか、どれくらい関心が持たれていたのでしょうか、大いに気になるところです。全てに八幡地域が取り上げられ掲載されているわけではないでしょうが、あれこれと調べてみるのも面白いのではないでしょうか。 以下、京都の主な地誌を少しですが紹介させていただきます。

『京童』(中川喜雲著、1658年)

 江戸時代前期の先駆的な京都名所案内記。丹波出身の老爺が故郷への土産に、少年を案内者に京都を巡覧する見聞記という体裁をとり、書名もそこに由来する。洛中洛外87ヵ所の神社、仏閣、名所、旧跡などの由来、伝説を紹介し、古歌や自作の狂歌、発句をそえている。また各所の景観や故事に人物を配した挿図を組み込み情緒的、趣味的な名所案内記としての完成度を高めている。『京童跡追』(1667年)はこの続編。(日本歴史大事典)

『京雀』(浅井了意著、1665年)

 『京童』の趣味的名所記から一歩進めた実用的地誌の性格をもち、後続の京都案内記に大きな影響を与えた。巻1は京都の沿革、巻2から巻7は京都市街の東西南北すなわち東西路、南北路の各通りと町の紹介で、寺院、神社、史跡、名所、名物(商工諸職)などが解説されている。各通りの著名な商売を職人尽絵風に描いた挿図が39図ある。続編を称する『京雀跡追』(1678年)がある。(日本歴史大事典)

『京羽二重』(孤松子著、1685年) 

 江戸前期の総合的な京都案内書。京都の自然、史跡、名所、神社、仏閣など観光的案内と、京都の市街、文化人、諸商売人、役人衆などの現況を、羽二重の縦糸と横糸のような細やかさで撰述。時事的項目を掲載したので、その改訂は必須となり、元禄の増補版『京羽二重織留』、宝永の改訂版など出版が続いた。(日本歴史大事典)

『雍州府志』(黒川道祐著、1686年)

 京都の所在する山城国を中国古代の漢から唐に至る帝都長安の所在した州(国)、雍州に擬し、また中国の地誌書『大明一統志』に倣って、山城国の地理、歴史、寺社、土産、古跡、陵墓等について漢文体の地誌を完成させた。(日本歴史大事典)

『都名所図会』(秋里籬島著、竹原春潮斎画、1780年)

 江戸時代のベストセラー。解説の妙もさることながら、その挿絵のすばらしさに多くの人々は魅了された。(『図説京都府の歴史』河出書房新社) 
 都名所の百科全書ともいえる『都名所図会』は、その後の旅のかたちに大きな影響をあたえた。一生に一度の本山参詣にせよ、気軽な遊山・行楽にせよ、旅を楽しもうとした江戸時代の人々にとって、名所図会はなくてはならない道案内だった。(『京都名所むかし案内』創元社)

『拾遺都名所図会』(1787年)は『都名所図会』補遺。

 その他にも多くの地誌が刊行されています。下記も参考にしていただければ幸いです。

<参考図書>
 『新修京都叢書 全25巻』臨川書店

<データベース>
  • 京都市歴史資料館 → フィールド・ミュージアム京都 → いしぶみを探す ほか
  • 京都府総合資料館 → 貴重書データベース ほか
  • 国際日本文化研究センター → データベース → 平安京都名所図会 ほか

by y-rekitan | 2014-08-28 07:00
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