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◆会報第54号より-06 弥生時代

シリーズ「2014年夏 古代の声を聞く」・・・その2
弥生時代を学ぶ

 野間口 秀国 (会員) 


 前号の縄文遺跡訪問に引き続き、本号では弥生時代について学んだ事を書きたいと思います。

 この夏、京都府立山城郷土資料館にて7月5日から8月31日まで企画展「巨椋池と木津川をめぐる弥生遺跡」が開催され、巨椋池周辺の遺跡から発掘された弥生時代の土器などが数多く紹介されました。関連遺跡は20余を数え木津川、桂川、かつての巨椋池周辺の市町村に存在します。期間中には関連講演会(講座)が2回開催され、弥生時代に関する貴重な話を聴く機会に恵まれました。

 1回目(7月12日)は京都府の文化財保護課の藤井氏より「巨椋池と木津川をめぐる弥生遺跡」と題して、弥生時代とはどんな時代?といった基本的な事柄などをとても分かりやすく話していただけました。
 手許のメモに残る弥生時代の特徴は、
   1)稲作が始まった、
   2)銅鐸(金属器)が作られた、
   3)争い(支配と被支配)が始まった、
   4)集落の周りに濠が作られた、
   5)竪穴住居に住んでいた、
   6)方形周溝墓に埋葬されていた、
などなどです。これらのことが記憶に新しかったこともあり、前号で書きました三内丸山遺跡を訪れた際にも役だったことは言うまでもありませんでした。
 特に興味深かったことは銅鐸に関してです。◆会報第54号より-06 弥生時代_f0300125_1701926.jpg金属を溶かして型に流し込んで物を作る技術(鋳造)はこの頃から始まったようです。本来、銅鐸は音を出す道具であり、早い時期の物は持ち運べる大きさだったようですが、時代が下ると共に見る(見せる)要素が増えて、飾りがだんだん多くなり、大きく重くなって持ち運べなくなり音を出すこともできなくなったとの説明がありました。この説明を聞いて改めて展示された銅鐸を見ると違いが良く分かりました。
 銅鐸の例でも分かるように、道具類が石から金属に変り始めると狩猟の方法もおのずと変わります。狩りには欠かせない矢じりも石から金属へと、軽く小さくなって射程距離も増してより遠くからも獲物を狙えるようになったのです。金属の利用は狩りに留まらず刃物や刀剣(武器)にも広がりを見せます。弥生の遺跡からは武器によって殺されたと思われる人骨などが発見され、先に記しました「争いの始まった時代」の理由も良く理解でき、三内丸山遺跡に見られた縄文時代の出土品との違いも分かりました。

 また2回目(8月2日)は長岡京の発掘に永年携わってこられた(*1)龍谷大学の國下教授より「水の道と弥生集落 ~考古学からみた地域間交流~」と題する話を拝聴しました。山城地域を中心とした琵琶湖・淀川水系の川、湖、海を俯瞰して水の道から水運や交流の歴史を考えるが主題でした。
◆会報第54号より-06 弥生時代_f0300125_1839537.jpg
木津、宇治、桂の三川とかつての巨椋池、琵琶湖は水の道を形成し、複数の津(港)となる弥生集落は交流の起点であり、多くの出土品がそのことを物語っていると話され、数多くの弥生遺跡から具体的な実例を挙げての説明は分りやすく納得できる内容でした。特に、交通の中継点としての旧巨椋池一帯に関して「西(東)から東(西)へ」の説明で、西は遠く朝鮮半島や九州北部、東は東海・北陸」と、広がりを意識できる説明はとても興味深く聞くことができました。交通の中継地は同時に交易や技術交流拠点でもあり、そのことは各遺跡から出土する土器、石剣、住居跡、方形周溝墓、玉造工房などの類似品が物語っているとの説明も良く理解できました。
  このように初回では弥生時代の基本的なことを学び、2回目は山城地域の水の道や交流の歴史などについて学べました。また武末純一福岡大教授の「弥生人、交易に分銅使用か」と題する記事(*2)からは朝鮮半島南部、長崎、鳥取、大阪と、西から東への弥生人の交流の様子が伺えるものでした。この夏の古代の学びはその入り口ではありましたがこれからもさらに学びの場を求めたいと思いました。

<参考図書等>
  • 京都府立山城郷土資料館にて開催された
    平成26年7月12日 文化財連続講座(第3回)の配布資料 及び 平成26年8月2日 文化財講演会の配布資料
  • 吉川弘文館刊 玉田芳英編 『史跡で読む日本の歴史』
  • 宇治市歴史資料館刊 『特別展巨椋池』
  • 京都新聞記事 
      (*1) '14.8.2 夕刊  
      (*2) '14.8.11 朝刊(武末純一福岡大教授発表)
  

この連載記事はここで終りです。       TOPへ戻る>>>

by y-rekitan | 2014-09-28 07:00
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