◆会報第55号より-04 神原の講(秋)

代々つづく神原の「講」 =秋編=

野間口 秀國 (会員)


 10月10日(金)午後1時前、この日行われた講にお誘いいただきました歴探会員の小嶋さん宅を訪れました。隣接する駐車場で暫く待っている間に1台の軽自動車が入ってきました。始めから主題からそれますが、講が始まる雰囲気も感じていただけるかとも思い書かせていただきます。

 車が駐車場に止まると、同世代と思われる一人のおじさん(私もそうですが)が降りてこられ「来ているよ~~~」と、決して大きくは無く、甲高くも無い、しかし良く通る声で近所に到着を知らせ回られる。戻られたおじさんは「もう40年もやっているよ。市内(京都の伏見区)から久御山町や淀を廻って今日は八幡のお客様だ」と問わず語りで教えてくださった。荷台には10種類を超えると思われる魚が積まれており、ほどなく近所の奥様が一人二人と来られ、いつもこうなんだろうな、と思えるような普段着の会話を交わしながら何かしら買われていた。懐かしさを覚えるひと時でした。

 閑話休題。買い物を終えられた一人の奥様も一緒に講の行われる近所のお宅へ伺いました。準備を終えられた奥様が参加者を待っておられ、総勢6名が揃うと始まりました。なお、この講については会報の第36号(2013.03.25)で会員の村山さんが詳しく書かれておりますのでその号をご参考いただき、重複する内容はできるだけ避けたいと思います。

 36号では「十三仏画像」と「涅槃画像」について既に詳しく書かれてあり、これらの画像はこの日も見せていただきました。両画像の掛け軸に加えて、この日は古くから伝わる「鐘」を見せていただきました。鐘は縦横が約40cm、深さ約20cmほどの木箱に収められており、他に「鐘撞き小槌」と「数珠繰り」も収められていました。箱は一見しただけで時の経過を感じられるものです。

 鐘の材質は特定できませんでしたが、鋳造製で鐘の直径は外回り(ツバ部分)が約25cm、内回り(音を出す部分)が約20cm、高さが約4cmくらいでした。手にするとその重さが両手にしっかりと感じられました。小槌が当たって色の変わった中央部分からは、鉄以外の金属(銅や錫か?)も含まれていると思われましたが、鐘は黒光りして錆も全くありませんでした。このことからも今日まで講を守り引き継いでこられた皆さんが、いかに画像や鐘を大切に扱ってこられたかがうかがえる事実と思います。許しをいただき木槌を使って鳴らしてみましたが、鐘独特の小気味良い、しっかりとした濁りの無い音色でした。この音色にしばし鐘が作られた時代のこと思い、その頃と変わらぬ音色なんだろうな、ともう一度鳴らしてみました。f0300125_21364653.jpg

 鐘を収めた木箱の外側には「嘉永四(*1851)年戌歳二月 念佛講中什物」と墨で書かれてあり、箱の中に残る布には「城州綴喜郡八幡茶畑町住 寄附人山本嘉兵衛近頼 講中九人」と、同じく墨で書かれていました。ここに記された「茶畑町」の地名は前述の36号でも触れられていますが、現在の神原の地区にあたるとのことでした。『京都府の地名』平凡社刊(P181)の「八幡市馬場町」の項に茶畑町の名前が見えます。ここに書かれた説明では、「南北に通る大道(オオミチ)沿いの・・・(中略)・・・ 町の中ほどから善法寺家門前までの横町(ヨコチョウ)を茶畑町とも称していた。」とあります。また、同書(P167)には「八幡惣町」の項で「石清水八幡宮の門前町として形成された町場。慶長五(*1600)年の指出帳(注1)によると馬場町・・・(中略)・・・他25町2村が・・・(略)」と書かれています。このような記載より、茶畑町の名前は公的な記録などには表れないが、地元の人たちにそのように呼ばれていた町の名前なのでしょう。

 また、上記の通り「講中九人」とありますことから、当時の構成員数は九人であったと思われます。「今では五人になってしもうて・・」と話される小嶋さんの語り口に時代の移り変わりをいやでも感じずにはおられませんでした。五名の皆さん方が「涅槃画像」と「十三仏画像」を交互に1年半毎に担当して春と秋の講を引き継いでおられるとのことでした。永年この地に暮らしてこられた方々とともに秋の穏やかな昼下がりを、昔懐かしい栗饅頭やお茶とともに暖かく過ごせたことはとても貴重な時間でした。

 最後に、暖かく迎えていただき、いろいろと教えていただきましたご出席の皆様に紙上ではございますが厚くお礼申し上げます。いつまでもお健やかに。

 (*) 西暦年は著者記入
 (注1)三省堂 大辞林 weblio辞典より   中世後期,上級権力の
      要請で提出された面積・作人・年貢高などの土地関係書類。
by y-rekitan | 2014-10-28 09:00 | Comments(0)
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