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◆会報第75号より-04 八幡の古代植物②

シリーズ「八幡の古代植物」・・・②
八幡に見る古代植物 (第2回)

古代植物研究会代表 大谷雅彦 (会員) 


天台烏薬について

 「天台烏薬(てんだいうやく)」とは薬草です。◆会報第75号より-04 八幡の古代植物②_f0300125_16531464.jpg現在でも街中の漢方薬店には、主に健胃剤の「烏薬(うやく)」として売られています。
 和歌山県新宮市発行の『徐福(じょふく)』という小冊子の第1頁に以下のような文章があります。

 徐福は、今から二千二百年ほど前、中国を統一した秦の始皇帝に仕え、その命により東方海上の三神山にあるという不老不死の霊薬を求めて三千人の童男童女を引き連れ、この熊野に渡来したと伝えられています。徐福一行は、この地に自生する「天台烏薬」という薬木を発見しましたが、気候温暖、風光明媚、更には土地の人々の暖かい友情に触れ、ついにこの地を永住の地と定め、土地を拓き、農耕、漁法、捕鯨、紙すき等の技術をこの地に伝えたといわれています。・・・・・・

 新宮市は、市内に徐福公園を造り、徐福像を建てています。また、「徐福上陸の地記念碑」やお墓を作り、同行したという重臣7人の碑、天台烏薬をたくさん植えた立派な菜園を造っています。その菜園では天台烏薬を4千株植えて、各種加工品にして販売しています。このことは、昨年、現地を訪れ確認しました。◆会報第75号より-04 八幡の古代植物②_f0300125_20403974.jpgところで、平成17年12月20日付、徐福友好塾発行の“「徐福さん」――伝承地に見る徐福像と徐福伝説”という本の中には、徐福が到来したという伝承の地は、日本全国で26カ所とあります。ネット検索では、日本全国で31カ所が名乗りをあげており、京都府下では伊根町が有名です。なお、この本の中では、各地の徐福到来地で、徐福が探し求めた不老不死の霊薬(仙薬ともいう)は、天台烏薬の他に、「アシタバ」説、「フロフキ」説、「シャクナゲ(茶)」説、他多数があります。

 一方で、八幡市と枚方市の隣接地にある摂南大学薬学部が所有する山野地には、天台烏薬が自生しています。他にも、枚方の長尾にある菅原神社の境内地にもたくさん自生しています。
 摂南大学薬学部付属薬用植物園が発行している小冊子(邑田裕子先生が編集していると思われる)の最初の頁のなかの概要のなかで、次のような文章があります。
敷地周辺に広がる竹林や落葉広葉樹林中には、自生状態で生育しているテンダイウヤクが見られます。テンダイウヤクは中国原産で、小野蘭山が「本草綱目啓蒙」の中で、「烏薬は城州八幡で多く栽培されている」と記述していることから、これらが野生化したものと考えています。現在も、園内の思わぬ所に実生苗を発見することがあります。

 摂南大学薬学部の邑田裕子先生は、関西の薬草研究者として有名な方です。なお、ご主人の邑田仁氏
は、現東京大学付属小石川植物園園長(教授)で、ご夫妻とも植物学(薬草学)では著名な方です。
 邑田裕子先生にお会いして、テンダイウヤクについてお伺いすることができました。先生は、次のようにお話してくださいました。
テンダイウヤク(天台烏薬)は、日本の中世の頃、中国の天台山から日本の城州八幡(現在の八幡市)に持ち込まれ、繁殖が進み、八幡を中心に枚方の長尾・藤坂あたり一帯の山野に繁茂したと考えられる。
ここから更に、紀伊半島や大阪府池田市あたりに伝播され広まっていったと推測される。
現在でも、その名残として、ここ摂南大学薬学部の山野地に自生している。他にも、この近辺地の長尾から藤坂あたりにも自生地がたくさんあったが、住宅開発で無くなった。唯一、長尾の菅原神社の境内地には今も自生している。他にも、八幡の山野を探せば見つかるかもしれない。

 なお、邑田裕子先生の結論として、徐福と天台烏薬との関係は全く無い! 時代が合わない!!との説を強く主張されています。私も先生の説に賛同するものです。
(追伸)
1、漢方薬となるのは、根にできる留根(ふくれたかたまり)の部分です。
2、和歌山の白浜温泉の千畳敷海岸の駐車場横の売店で、他の幼木に混じって、天台烏薬の幼木が販売されていました。私が昨年買ってきたものが、現在、鉢植で立派に生育しています。
3、天台烏薬は葉の形に特徴があり、葉の葉脈がタテ3本だけなので、山野地で見つけやすいので探してみて下さい。
【次回は、ナギの木について】 空白



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by y-rekitan | 2016-09-20 09:00
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