◆会報第43号より-07 謡曲女郎花

謡曲のふるさと八幡(その3)
女郎花(おみなめし)

 猪飼 康夫 (会員)


 謡曲では「女郎花(おみなえし)」を「おみなめし」と読ませています。大変人気のある曲で、お能、謡曲、仕舞、など、よく演じられています。
 「女郎花」は、きわめて世俗的な物語になっています。肥後の国松浦潟の僧が都へ上る途中、石清水八幡宮に参詣しようと男山に立ち寄りますと、山麓には女郎花が美しく咲き乱れています。旅僧が土産に一本手折ろうとすると、一人の老人が現れてそれを止めます。
 二人は古歌を並べあって問答しますが、旅僧が古歌に詳しいことに感心した老人は花を折るのを許します。老人は八幡宮の社前に案内し、更に男塚・女塚を見せ、これは小野頼風夫婦の墓で自分が頼風であることをほのめかし、消え失せます。
 旅僧は、土地の人から詳しく頼風夫婦の話を聞き、夜もすがら菩提を弔っていると、頼風夫婦の霊が現れます。
 頼風の霊は、夫の足が遠のいたことを恨み女が放生川に身を投げたこと、女塚から生え出た女郎花がまるで頼風を避けるように靡きしりぞいたこと、自分もまた身を投げたことを語ります。今はともに地獄に落ち、邪淫の悪鬼に責められ苦しんでいるので、どうか助けて欲しいと僧に救いを求めます。
 女塚は女郎花塚ともいって、松花堂庭園に立派に保存されていますが、男塚(頼風塚)は、八幡今田の民家に囲まれた狭い空地にひっそりと残されています。おい茂る芦が女塚の方向を向いているので、“片葉のよし”ともいわれ、哀れを誘っています。…芦は発音が“悪し”に通じるのを嫌がって、しばしば“よし”(葭)と言いかえられます。
 なぜ、男の足が遠のき、後追い心中までしなければならなかったのか分かりませんが、せめて紙面の上だけでも寄り添えればと、男塚と女塚の写真を並べておきます。
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by y-rekitan | 2013-10-28 06:00 | Comments(0)
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