伊佐家の暮らしとしきたり その1 伊佐 錠治 (会員) 伊佐家住宅は享保19年(1734)に建った古民家である。主屋の棟札と建築古文書から建築された年代が明らかになり、昭和50年6月に重要文化財の指定を受けた。その後、昭和55年12月には建物すべてが重要文化財の追加指定を受けたので、建物に関しては永久保存されることになり失われてゆくことはない。但し、この家が継承してきた暮らしやしきたりについては積極的に保存して行く体制が確立されているわけではない。最近になって過去を振り返って眺め直す生き方が注目されるようになり、古民家とその暮らしとしきたりについても、現在の生活と比較するうえで関心が高まってきている。 江戸時代から明治、大正、昭和、平成と重ねてきた生活を建造物と一緒に後の世に伝え残して行くことは、古民家を所有しているものに課せられた責任ではないかと思う。伊佐家の建造物は構造面からは詳しく調べられているが、暮らしについてはあまり知られていない。そこで暮らしをハード面とソフト面に分けて眺めてみることにする。 一般的に、家屋敷については建物の外観を始め各部屋などの写真は公開されているので、目にすることができる。しかしハード面でも家屋内部の細かな構造、特に生活の知恵によって形造られている部分構造は知られていないので、暮らしを支える生活の知恵に絞って紹介する。 ![]() 生活の知恵を取り入れた扉に葦障子がある。空調のなかった昔の部屋で少しでも快適に過ごすために工夫されたもので、少しでも風通しをよくして、見た目にも涼しさを与えるものである。空気の流通を考慮したものには、部屋の飾りであり座敷の格式を高めるために工夫された欄間がある。座敷が必要でなくなり、部屋の気密性が要求される現在の生活では欄間は必要でなくなったが、部屋飾りと空気の流通を兼ね備えた傑出した間仕切りである。 ![]() 現在の生活では階段は移動できないものとして認識されているが、移動も設置も簡便な階段に箱階段がある。箱階段は階段の段差に見合った引出などが埋め込まれていて収納庫としても役に立つものである。 ![]() ![]() このかまどにはかまどの脇に炭消し受け(図5)が設置されていて、かまどに残った燃える炭をこの受けに移して水を掛け消し炭にすることができる。これは板間にかまどがあるため火の用心に作られたものと思われる。 ![]() その他、多くの場所に生活の知恵を見だすことができる。① 戸袋内に神を祀り(図7)、忌中には天井から吊るしてある扉を下して蓋をする。②内玄関には濡れた番傘を置く傘立てならぬ折りたたみ式の傘置き(図8)がある。③調理台とか配膳等に必要な時だけ引き倒して用いるばったり床几。④蔵の入り口にはネズミが入らない様にネズミ返し(図9)を設置する。 ![]() ![]() ![]() この様に生活空間には多彩な工夫が残っており住みやすい環境が整えられてきたものと思われる。 (つづく)
by y-rekitan
| 2014-03-28 08:00
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