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◆会報第49号より-07 水月庵円福寺

水月庵 藪を抜ければ円福寺
―「自転車で巡る名所案内」下見見聞記―

八幡の歴史を探究する会 


 八幡の歴史カルタに、「探訪マップ」が付録としてついている。それを目当てに八幡の各所を自転車で巡ったある会員が、一人で訪れても何のことかよくわからないとこぼした。やはり「先達(せんだつ)が必要という事なのだろう。
 私たちに先達が務まるというものでもないが、少なくともカルタに取り上げられる名所案内であれば何とかできるのではないか。そんな思いで「自転車で巡る八幡の名所案内」という企画を立案した。市の観光協会からも後援を頂いて実施することになった。これまで八幡の名所案内と言えば男山東麓ないしは旧八幡町に偏っていたきらいがある。自転車を借りれば遠出も可能ではないか!
 そこで、大体のコースを策定し、4月1日に下見を実施した。
この日、京阪八幡市駅前は花見客でごった返していた。担当者である高田さん、村山さん、谷村さんと私の4名は、観光協会前を出発し、科手・橋本方面をめざした。
 椿で有名な常昌院、長宗我部盛親が潜んだとされる屋敷跡、二宮忠八が飛行機(器)製作に励んだ場所、橋本の旧街道と遊郭跡、そして先日の橋本歴史探訪で訪れた西遊寺。橋本のバスターミナル。それ等の「名所」を詠んだカルタの句は以下の通り。
    めじろ呼ぶ常昌院の紅椿
    橋本の街道沿いに渡し跡
    湯沢山で寺号茶久蓮寺
    鳥羽伏見橋本の街焼き戦い終わる

 久修園院の墓地に在る淀屋関連の墓標を確かめ、安居神事と関わりのある「鹽竃」の石碑脇を抜けて猿田彦神社へ。ここでは神社の来歴について考えたい。猿田彦が八幡神を先導したとの伝承があるが果たしてどうか。道祖神との関わりはどうなのか。そもそも猿田彦社は、村の鎮守なのではないのか?
 微笑み地蔵で知られる講田寺も謎が多い。そして、和気神社へ。足を切られた清麻呂の足がつながり立ったとされる伝承と史実についても考えたい。ここには豊蔵坊信海の墓がある。
 「ママチャリ」ではいささか登りがきつい坂道を登れば茶臼山古墳跡の碑が建つ男山三中の一角に出る。ここから出土した石棺は、高槻の今城塚古墳の石棺と材質が同じであるという。京大博物館に保存されているのを見学したことを思い出す。
 坂道を下ればさくら公園。花見客で溢れていたが、ほとんど顧みられることのない蕪村の句について考えたい。
 そして水月庵にたどり着いた。恥ずかしい話であるが、水月庵に来たのは初めてである。
    水月庵藪を抜ければ円福寺
 このカルタも、制作した側の立場なのに、何のことかよく分らなかったのである。だが百聞は一見に如かず。水月庵は鬱蒼とした竹藪に囲まれているのである。水子地蔵が祀られているということでも知られている。そのお地蔵さんに手を合わせて帰ろうとすると声をかけられた。見ると庵主様である。水月庵は尼寺である。
 親切な庵主様は、境内の隅にあるコンクリート製の建物の屋上に上がれば眺望がよいとおっしゃる。なるほど、男山の団地から枚方の街並みが一望できる。近くの古い民家は、旧幣原の村落に属していたとのこと。
 「折角のお見えだから円福寺まで案内しますよ」と声をかけられ喜んだことは言うまでもない。
 ◆会報第49号より-07 水月庵円福寺_f0300125_1545113.jpg竹藪の中は、ひんやりとしてどこか異次元の世界に踏み込んだ印象を受ける。途中、浅井家の墓がある。浅井家といえば浅井周斎が知られる。周斎は円福寺に土地を寄贈した有徳人で、南山焼の創始者でも有名である。
 やがて円福寺にたどり着く。円福寺は、「万人講」で知られ、5年前に参加したことがある。お斎(おとき 精進料理)を頂き、普段は非公開の達磨像を拝んだ後、青い目の修行僧の案内で御殿に導かれ、妙心寺から来られた高僧の講話を聴いたことを憶えている。
 その円福寺の前を横切ろうとすると庵主さんの姿を認めたご住職が寺を案内させますよと声をかけて下さった。
 この上もない僥倖である。若く屈強そうな修行僧に案内され、本堂に安置される本尊「十六善神」や「釈迦十大弟子像」などを拝観。釈迦如来像の何と慈悲深いお貌であろうか。そして彫の深い弟子達の解脱を希求する姿に暫し圧倒されたものである。
 続いて檜木の香り漂う禅堂に案内される。堂内を支配するのは静寂と清澄感であった。しばらく座禅したい気にさせられる。但し、雑念ないしあらぬ妄想に襲われ一喝されること疑いない。
 円福寺を後にした私たちは国道一号線の洞ヶ峠まで出てそこから吉井のバス停を経て松花堂庭園に帰って来た。得ることの多い半日であった。
 自転車で巡る名所案内は、5月から隔月に、第一日曜日に実施される予定である。詳しくはチラシでご確認していただきたい。人数が制限されるので参加希望はお早めに!
by y-rekitan | 2014-04-28 06:00
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