◆会報第59号より-04 八幡八景②

シリーズ「八幡八景について」・・・②
八幡八景について-その2

   安立俊夫 (会員) 


4 江戸時代の八幡八景

 元禄期の「八幡八景」を編集したのは柏村直條(1661~1740)ですが、霊元天皇(1654~1732)によって選定されたと思われる「八幡八景」の漢詩・和歌も残されています。それを紹介します。
 なお、漢詩の読み下し文については、間違いも多々あると思います。ご指摘、ご教授頂ければ幸いです

雄徳山松
                       
公辨法親王余白
  雄徳山頭古廟前  雄徳山頭古廟の前
  蒼宮擎蓋立森然  蒼宮蓋を擎(ささ)げて立ち森然
  到今猶見神明化  今に至りて猶(なお)見ん神明の化
  佳気氤氳幾百年  佳気氤氳(いんうん)幾百年    
   氤氳=気があたりにたちこめているさま

                  
幸仁親王 有栖川兵部卿余白
  おさまれる世にそやすらく男山 
   さかゆく松の 花の光は

極楽寺桜
                  
實種卿 風早中納言余白
  莫伐従来花有神  伐ること莫(なか)れ従来花に神有り
  神人日々揖宮巡  神人日々宮を揖(ゆう)して巡る
  彩霞溶曳紫雲外  彩霞溶曳たり紫雲の外 
  極楽寺中占断春  極楽寺中春を占断す

                  
基福卿 園儀同余白
  色も香もさそな妙なる法の場に 
   木末なからの 花の手向けは

猪鼻坂雨
                  
韶光卿 勘解由小路余白
  午鳩叫罷日朦朧  午鳩叫(よ)び罷(や)んで日朦朧 
  石磴落来蓑笠風  石磴落来る蓑笠の風
  一雨山頭又山脚  一雨山頭又山脚 
  依然畫棟挿晴空  依然として畫棟晴空を挿む
    石磴=石のある坂路。石の段
    山脚=山の裾、麓

                 
資熈卿 中御門権大納言余白
  岩根ふむ猪鼻坂にふる雨は 
   神のみゆきの道や清むる

放生川蛍
                   
真敬法親王 一乗院宮余白
  放川似帯繞神丘  放川帯に似て神丘を繞(めぐ)る
  萬點蛍光照両眸  萬點の蛍光両眸を照らす
  回首水天同一色  首を回せば水天同一色 
  可中直見数星流  可中直に見る数星の流るゝを

實業卿 清水谷大納言余白
  玉と見ていけるを放つ川辺には 
   もえて流るゝ 水の蛍も

安居橋月
                     
持實卿 花山院大納言余白
  月白風清緑水長  月白風清くして緑水長し
  一天晴色満秋光  一天の晴色秋光満つ
  千年勝地不虚美  千年の勝地美を虚(むな)しうせず
  皓々相憐橋上霜  皓々相憐れむ橋上の霜

                    
通躬卿 中院中納言余白
  かけて世に仰く八幡のふもとゝや
   月もくもらぬ 前の川橋

月弓岡雪
                    
道恕 安井前大僧正余白
  天山既白月如弓  天山既に白(あけ)なんとして月弓の如し
  片々六花舞太空  片々たる六花太空に舞う
  巧弄化生神女手  巧みに化生を弄す神女の手
  暁来幻出水晶宮  暁来(ぎょうらい)玄出す水晶宮
   六花=雪の異称

                    
重條卿 庭田中納言余白
  くもりなき名にひかれてや雪も猶 
   光をみかく月弓の岡

橋本行客
                   
豊長卿 高辻大納言余白
  橋本郵程路遠哉  橋本の郵程路遠い哉(かな)
  乗傳冒暁共徘徊  乗傳暁を冒(おかさ)して共に徘徊
  玉虹衆客富多景  玉虹衆客多景に富む
  聚散若雲幾往来  聚散雲の若(ごと)く幾往来
   郵程=宿駅と宿駅との間の道のり
   聚散=集まったり散ったりすること

                   
惟庸卿 竹内三位余白
  きき渡る名のみ朽(くち)せて橋本の
   里はゆきゝの舟を呼ふなり

大乗院鐘
                   
基董 石山羽林中郎将余白
  向暁高楼日初旦  曙に向ひて高楼日初(はじ)めて旦(あした)なり
  緇衣井々寺前鐘  緇衣(しえ)井々寺前の鐘  
  乍従霞外紅音発  乍(たちま)ち霞外従(よ)り紅音発す
  吹下男山第一峯  吹き下る男山第一峯
   緇衣=僧侶

                   
實陰 武者小路中将余白
  寺の名もたかき御法の鐘の音に 
   誰長き夜の夢覚ますらん                        
(つづく)余白

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by y-rekitan | 2015-02-28 09:00 | Comments(0)
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