八幡に見る古代植物 (第1回) 古代植物研究会代表 大谷雅彦 (会員) 植物は4億7千万年前から、この地球上に存在し、世界には現在25万種~30万種の顕花植物が生育しているといわれています。 日本で古来より生き続けてきた植物は、①薬草として、②神社仏閣でご神木として守られて、③繁殖力が特に強い植物として、④特に珍しい植物として(独自の生態を確保して)生存できたといえます。薬草として人間に保護されてきた、あるいは、神社の境内では樹木などが伐採されないという理由から生態系が守られてきたというのがその理由の一つではないかと思うのです。 歴史とは、人間を中心として、その時代や社会構造との関連性の中で成り立つドラマ(物語)だといえます。この歴史物語の中に、少なからず植物が登場することがあります。私は、この脇役にある植物が、どのように伝承されてきたのか、そんなことを探し求めている者です。 植物学では、学術的・学問的に植物そのものの生態が語られることはあっても、伝承や物語のなかの植物が扱われることはあまりありません。私の調べでは、数多くの伝承物語のある植物や大変珍しい植物が見つかっています。 今回から3回にわたり、八幡の歴史に関係ある植物を紹介します。第1回は、男山に古来より自生しているヤマアイについて、第2回は天台烏薬(てんだいうやく)(薬草)について、第3回はナギの木について。 八幡市教育委員会発行『男山で学ぶ人と森の歴史』のなかで、ヤマアイは次のように紹介されています。 ヤマアイは薄暗い湿った林床に群生するトウダイグサ科の雌雄異株の多年生草木。4月ごろ葉の脇から細長い花序を出し、穂状に花をつける。藍染料をとるふつうの「アイ(タデアイ)」はタデ科の植物で近世以降に普及した。 つぎに、昭和49年10月7日発行『京滋植物風土記』(京都新聞社編)からの抜粋と他の資料によって男山山中のヤマアイについて記してみます。ヤマアイは、大嘗祭・新嘗祭などの神事に着用する小忌衣(おみごろも)の染料として利用された。小忌衣は青摺袍(あおずりのほう)ともいい、清浄な物忌みの斎服のひとつで、白地に草・木・蝶・鳥の文様を型にあててヤマアイで摺り染めした。発酵させる藍染とは違って、褪色しやすい。 ![]()
6月11日、石清水八幡宮に西中道氏を訪ね、詳しいお話をお伺いした上で、大嘗祭での山靛(ヤマアイ)に関する石清水八幡宮の対応を示す資料(コピー)を頂戴することができました。その資料をもとに、昭和3年と平成2年のそれぞれの大嘗祭の様子を、山靛中心に紹介します。 (上記資料からの抜粋)
〈解説〉 天皇陛下が、御即位の後初めて穫れた新穀を天照大神をはじめ天神地祇にお供えし、自らもお召し上がりになって、天皇としての霊統を正しく継承あそばされる儀式。それが御一代一度の大嘗祭である。大嘗祭の際、陛下のお側近くでご奉仕される方々が束帯や十二単等の上につけるのが、小忌衣という神事用の上着である。小忌衣は、白い麻の生地に植物や鳥の模様を薄緑色に摺った素朴で清楚なもので、この薄緑色は、古来、石清水八幡宮の境内、男山で採取された山靛の葉の汁を用いて着色するのが慣例とされている。大正、昭和両天皇の大嘗祭においても当宮境内に自生している山靛、六貫五百匁(約20.4キログラム)が京都御所に上納された。
以上にてヤマアイの項は終わります。 (次回以降つづく) 空白
by y-rekitan
| 2016-07-28 10:00
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