八幡に見る古代植物 (第4回) 古代植物研究会代表 大谷雅彦 (会員) イチイ科イチイ属、常緑針葉高木樹。日本全国に生育していますが、近年はあまり見られなくなりました。東北地方から北海道に多く見られるようです。雌雄別株で、秋に赤い実を付けるのは雌株です。別名アララギとも呼ばれ、東北地方ではオンコとも呼ばれています。 イチイの名前の由来は、仁徳天皇が、このイチイの木で笏(しゃく)を作らせ、その功徳をもって正一位を授けたことから、イチイ→一位となり、ここから階級制の名称に取り入れられたとも伝わっています。 石清水八幡宮の研修センターの昇り階段の左下奥の隅にイチイの幼木があり、木の名前「イチイ」の札が付いているのでみてください。 中国地方の大山(だいせん)の頂上には、野生種のイチイが自生し、天然記念物に指定されています。 樹としては、以前、床柱に利用されていました。針葉樹の中ではかなり堅い材に属し、強度も十分あります。また、年輪が細かく木肌がなめらかで光沢があり優美な感じがします。さらに、板の反りや割れも少なく、重厚な割に切削などの加工も容易であるとされます。 木が曲がっていることが多いため製材の歩留りが悪いことや材そのものが少ないことなどを除けば優れた用材で、これほど木工に好適な材はまず見当たらないとさえ言えます。建築材や家具に使える程の量が確保できないので、現在では彫刻など、小さくて高価なものの原材料となっているのです。 赤くて艶がある材質が珍重がられるので、寄木細工や象眼細工の材料になることが多い。そのため、飛騨高山では「一位一刀彫」という伝統工芸品があり、現在でもたくさんの彫刻師がいます。また、以前では鉛筆の材として多く使われていました。現在でも、鉛筆のB,B1、B2・・・等芯の軟らかい鉛筆の木材はイチイが使われているようです。
イチイ=一位にちなんで、「大宝律令」における位階制について紹介します。大宝律令は、大宝元年(701)に制定されました。それ以前の冠位は48階を基礎にしていますが、大宝律令は、48から30に減じています。 親王は一品(一位)から四品まで4階の品位(ほんい)に、諸王・諸臣は同じ一品(正一位)から従 五位下の間におかれ、親王と区別されています。外臣に対しては、正五位上から下の位に置かれましたが、朝廷への功績に応じて叙されました。(品はほん、又はぽんと読みます) その後、時の天皇が数度にわたり改正(改編)しますが、基本的に大宝律令の位階制が維持され、明治に入って一旦廃止されます。しかし、これに似た位階制が出来、これが延々と続き、現在の我が国の公務員の職階性につながっているとされます。 今回で、八幡に見る古代植物は終わることとなります。今後、八幡市内で歴史的にゆかりのある植物がみつかることを楽しみにしています。そして、八幡に現存しない古代植物も他にはたくさんありますので、今後みなさんにお伝えする機会があればと考えているところです。
by y-rekitan
| 2017-01-20 09:00
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