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◆会報第107号より-04 八幡の花木③


八幡さんの花木
―その3(航海記念塔~神応寺~鳩ケ峰~男山レクリエーションセンター)―

  家村 輝男(会員) 


はじめに

 毎日眺め、散策している身近な男山。しかし、石段横の植物、巨木の木肌や木についた緑の葉っぱをじっくり見たり、嗅いだりさわったりしたことは少ないと思います。鎮守の杜の自然観察をしながら散策を楽しみました。
 八幡さんの鎮守の杜の自然観察は次のコースで3日間に分けて観察しました。第1回調査は会報105号と106号の2回に分けて報告しました。今号は第2回調査結果を報告します。
① 第1回調査(4月3日)
一の鳥居~頓宮~髙良神社~裏参道(太子坂)~展望台~(清峯殿)青少年文化体育研修センター
② 第2回調査(8月7日)
航海記念塔~神応寺~鳩ケ峰~男山レクリエーションセンター
③ 第3回調査(9月4日)
二ノ鳥居~表参道・大扉稲荷社~三の鳥居~本殿

谷不動道を行く

 一の鳥居から右に、モウソウチクの竹垣に沿って谷不動道へ行くと航海記念塔(五輪塔・重要文化財)がある。近くの頓宮西側にモミ(図22)の大木(前の木はハゼノキ)がある。
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常葉針葉樹の高木で、木肌は、暗灰色で亀甲状の割れ目がある。針葉の先は二つに裂け少しとがる。ぽっくり状の球果が上向きにつく。諏訪大社の御柱祭の主役はモミの巨木です。蓼科山の御柱の森が伝統を守っている。
 不動尊入り口駐車場に、ムクノキの大木の切り株(図23)がある。
 イロハモミジ林の隅に、センダンの大木がある。

   妹が見しあふち(センダン)の花は散りぬべし 
   わが泣く涙いまだ干(ひ)なくに(万葉集-山上憶良)

        
 筑前守山上憶良が上官の大伴旅人の妻の死を悼む詩です。あふちを逢うにかけている。漢名は、楝(おうち)で古くはアフチと呼んでいた。◆会報第107号より-04 八幡の花木③_f0300125_15131828.jpg鎌倉時代には,斬罪人の首をさらす木に用いられ忌み嫌われたときがあった。江戸時代鈴ヶ森の周囲に植えた。これは元々邪気をはらう樹とされ火葬の薪や棺桶材ともした。葉に特徴があり、タラノキのように梢葉に羽状の葉が2~3回複葉、互生し小葉に鋭いの鋸歯がある。花は薄紫で初夏に咲く。
 鳥居のすぐそばにエノキ(図24)の大木。エノキといえば、一里塚、村の境、橋のたもとで、雄大な巨木を見ることが多い。男山では、山麓で見られるが林内では見られない。

   吾が門の榎(え)の実もり喫(ほ)む百千鳥(ももちどり) 
   千鳥は来れど君ぞ来まさぬ(万葉集-詠み人不詳)


 昔から「餌(え)の木」ともいい、ヒヨドリ、メジロ、ムクドリ、オナガ、ツグミなどの野鳥が好んで好みを食べて分布を広げる。◆会報第107号より-04 八幡の花木③_f0300125_18430317.jpg紫の大きな国蝶のオオムラサキ、黒地にやや黄みを帯びた白い紋のゴマダラチョウ、テングチョウの食樹である。オオムラサキとゴマダラチョウは幼虫で冬を越す。晩秋、樹から下りて根元にたまる落ち葉について冬を越す。落ち葉をひっくり返すと背中に四つの突起があるオオムラサキ、三つがゴマダラチョウの幼虫。根気がいるがほとんどがゴマダラチョウです。エノキの裏側に、コンテリクラマゴケ(図25)◆会報第107号より-04 八幡の花木③_f0300125_18492952.jpgコケという名だがシダ類クラマゴケ科。葉に青緑の美しい金属光沢があるシダ植物である。中国原産の帰化植物です。手にとっていろんな角度で観察すると光の加減で色が変化する。道ばたに、ハカタシダが多い、オオカナワラビ、フモトシダが見られる。
 イワガネゼンマイ(図26)は、葉の先端が急に細くなる。葉脈が鋸歯まで届きソーラスは縁の手前で止まる。
ジュウモンジシダは、特徴的な形態をしており、基部がその名の通り十文字をしていることから見分けられる。ひきめの滝付近に群生がある。

杉山谷不動尊にお参りして神応寺へ

 登り口の足下にキランソウが地面に広がり、地獄の釜にふたをして病人を追い返すといい、医者いらずとも呼ばれている。民間療法では、胃腸薬、胆石、高血圧、神経痛に用いた。
 斜面の土止めに植えられたシャガが大群生をつくり今まですんでいた植物を追い出す。ウラシマソウが姿を消している。ヤブラン、アジサイ、シャクナゲ、アオキが植生されている。
 谷側にキンニクもりもりの幹肌アカシデ(図27)が足を踏ん張っている。落葉高木で水源ダムの役割担う、葉は互生し先はとがる。春に花穂を下垂する。アカメソロいわれるように春先に若葉、若枝が赤く優美さで目立つ。ヤブミョウガ(図28)の美しい青い実につい写真に収めたくなる。
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神応寺の奥さんにお話を伺った

 神応寺本堂裏の崖際には、国の天然記念物でもあるクスノキの巨木がそびえていたが昭和20年頃突然大きな音をたてて碑とともに崖を転がり落ちた。石碑(三宅安兵衛遺志碑)を境内のイチョウの巨木の前に立てたが間違える人がいて今は鐘楼前の倉庫横に移した。本堂裏に、二代目クスノキ(図29)がある。
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 石碑には昭和三年二月九日指定 / 史跡名勝 天然記念保存大樟樹 / 管理者 八幡町と刻まれている。
 四九年間、手入れをして松花堂庭園に植えられている植物は大方、神応寺にもある。アジサイの苗木200鉢、置かれてあり植栽をされる。また、大イチョウが奥さんの天敵で、ギンナン、落ち葉の後始末で腰を痛められたことや散見するチャノキは昔、僧坊があって自給自足の名残などのお話を伺った。親切に対応していただいた。
 チャの、秋にひそかに咲くかぐわしい白い花をめでて欲しい。花は6弁花、果実は約2CMの扁球形で翌年熟すと三つに咲けて種子を三個のぞかせる。地図記号の茶畑は、∴です。
 参道やイロハモミジの谷は、秋には、美しい紅葉を見せてくれると思う。人には黙っていたい名所です。

寺の西側の小高い墓地に沿って行く

 モチツツジ、ナワシログミが見られ、小道にアリドオシ。縁起の良い木として「千両、万両、有り通し」といわれ、丸い葉が対生し、長いとげが二本突き出す。これがアリを刺し通すことから名がついた。葉は、大小交互に出ることが多い。冬には、小さいリンゴのような赤い実を沢山つける。少し行くと、背割り堤のタワーが見える。
 そこには、イヌザクラの大木、ヤマザクラ、ソメイヨシノなどサクラが植栽されている。モウソウチクの林へ。
 コナラの大木を過ぎたところに花が終わったコクラン(図30)があった。◆会報第107号より-04 八幡の花木③_f0300125_21191342.jpg菌根菌から養分を得て生育する。葉は、ゆがんだ広楕円形で先はとがり、花期は6~7月、暗紫の花を5~10個まばらにつける。男山の広い範囲で見られる。竹藪を抜けると登りになる。
 クヌギに似たアベマキ、コジイの幼木をすぎて、その先からしばらくコジキイチゴがみられる。葉はクサイチゴに似ているが葉や茎に繊毛が密生する。山側にクロバイの群落。葉は、濃緑色でつやがある。4~5月、房咲きの白花がはえて泡立って見える。枝葉の灰から良質のアクがとれ、染料に利用した。この葉は、乾くと黄色になる。
  道端にアイノコフユイチゴの群落がある。林下に普通にはえる。フユイチゴとミヤマフユイチゴの雑種で葉先がとがる萼に毛が多いなど両者の特徴を併せ持つ。11~1月頃赤く熟す。甘酸っぱく生食が出来ます。この尾根は、3月からヒサカキ→クロバイ→ネジキ→ソヨゴ・シャシャンボの花が順に楽しめる。
 ウワズミザクラの倒木が残っている。サクラの仲間だが、本年枝の先に白い穂のように咲く。花期も遅れ4~5月です。語源は占溝桜(ウラミゾザクラ)材の上面に溝を掘って占いしたことが由来です。大嘗祭の献上米を決める「斎田点定の儀」の亀の甲を焙る火材はこの木です。開花前の若いつぼみを塩漬けして食べる。秋の若い果実も同様に利用する。どちらも独特の香気があって新潟では杏仁香(あんにんこう)と呼んで食用にする人が多い。男山の南側には見られない樹木が多くある。リョウブ、大言海に「古く令して葉を飢饉の備へしめたれば名とす」とありリョウブは法令の意、官令で植えさせた時代もあったようです。7~9月に白い花穂を垂らし、成長にあわし樹皮をはげ落とすおもしろい木です。コバノガマズミ、ガマズミの兄弟分で美しい果実が愛好されている。酸っぱいが食べられる。コジュケイ、ツグミ、ヒヨドリが大好きです。春の若芽は山の幸として栄養価もあって人気のタラノキ。◆会報第107号より-04 八幡の花木③_f0300125_21254748.jpg密生した葉っぱが風になびきさやさやとハーモニーを奏でるソヨゴ、シャシャンボは、秋が深まると藍紫色に熟し食べられるがこの実が小さいことから名がついた。イソノキ、落葉低木で葉は互生、長楕円形で大きく葉脈が凹んで葉裏に突出して目立つ点が特徴。ツツジは、モチツツジとコバノミツバツツジの二種類が見られる。
 谷側コナラ林の後に芽吹いたクサギやアカメガシワの幼木が鳩ケ峰山頂まで見られる。
 周りの樹木は、クロバイ、ソヨゴ、サカキ、ウワズミザクラでこの付近は、昔はアカマツ林だったと推測できる。

男山レクリエーションセンターに向かう

 階段のフェンスに、白い花をつけたナツフジが小さく縁は波うつ葉っぱを絡ませる。後ろにアオハダ、木肌を爪でかくと緑肌が現れる。葉は短枝の先に数枚束生する。
 ◆会報第107号より-04 八幡の花木③_f0300125_21303780.jpg男山レクリエーションセンターの門脇にヤハズソウ(図31)の群落。この葉っぱを指先でつまみ切ると斜め上の支脈に沿って矢羽のように切れる。海外では、ジャパンクローバーとして牧草・肥料として栽培されている。日本では実用しない。ゲンゲ(レンゲソウ)、シロツメグサの海外種を牧草として栽培している。根に根粒バクテリアが共生し窒素を固定し蓄えるので絶えず窒素化合物を受けて育つ。

参道に出て八幡宮へ

 ナツハゼ、葉っぱはネジキに似ているが、葉の両面に堅い毛が密生している。実は赤から黒に熟していき食べられる。果実酒にもなるが男山では個体数が少ない。暫く行くとモウソウチク林の道沿いに落葉低木カマツカが株立している。葉の先は鋭い鋸歯がある。枝がよくしなり鎌の柄に使った。この性質から牛の鼻輪にも使われウシゴロシの別名もある。道標の近くには、ヤマウルシの紅葉もとても美しい、漆と兄弟だが、漆捕りも器材にも役にたたない。小葉の下部1~2対が他の葉の比べ極端に小さい。実も漆より小さく黄色の毛が密生することも大きな違い。八幡宮の駐車場に、ウワズミザクラ、ナナミノキの大木がある。今回は、ここで終了です。
 今回の調査は自然観察指導員仲間の正木さん(八幡市在住)、古結さん(樟葉在住)と一緒に観察をした。
   (次回は第4回調査結果の報告をする)


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by y-rekitan | 2022-01-24 09:00
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